
家族や身近な人たちにアトピー性皮膚炎の者がおり、夜間掻き壊したり、皮膚が変色したり、表情が良くなく悩んでいる姿を間近に見ておりました。
医学部を卒業して皮膚科を選んだのには、自身の皮膚の悩みもありましたが、身近な人たちの皮膚をなんとかしたい、という思いもありました。
皮膚科から美容皮膚科を学んでみると、日々のスキンケアでや美容的治療の中でアトピー性皮膚炎やドライスキンに応用できることが多々有り、当クリニックで行っていることを少しでも多くの方に伝えられたら、と思っています。
アトピー性皮膚炎は一つの原因のみで起こるわけではなく、多くの要素が絡んで症状がでます。表皮、なかでも一番外側の角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常を伴い、多彩で過剰な刺激反応及び、アレルギー反応が関与して生じます。
慢性に経過する炎症とかゆみをその病態とし、アトピー素因を持つ方も多いです。
日本皮膚科学会の診断基準は、下記3つが全て当てはまるものをいいます。?
①かゆみ
②特徴的な皮疹とその分布
③慢性・繰り返しの経過(*慢性;小児では2ヶ月、大人では6ヶ月以上続く)
アトピー素因とは
アトピー素因とは、アレルギーを起こす物質(アレルゲン)にたいして、反応しやすい体質のことです。両親・兄弟・姉妹またはご自身での気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患を持っていることも多く、IgE 抗体を産生しやすい素因などをいいます。
また、正常な皮膚には“バリア機能”が備わっています。これにより、外からの刺激から肌を守っています。

最近、アトピー性皮膚炎の方の多くが、遺伝的に皮膚の保湿因子の遺伝子異常があることがわかり、特に角層部分での異常によりバリア機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすくなっている状態(ドライスキン)になりやすいです。
このような、遺伝的な体質に、乾燥・汗をかくこと・掻き壊し・心的ストレスなどがさらに誘因となるのです。
また保湿に関わる皮脂腺の発達は13歳頃まで低い(ニキビの発症時期と同じです)と言われており、生後まもなくから小児期の保湿の重要性が認識されてきています。
国立成育医療センターの研究でも生後まもなくから保湿をしっかり行った集団ではアトピー性皮膚炎の発症率が少なかったとされています。
発汗については汗が長時間皮膚に付いているとかゆみの原因になりますが、発汗自体はアトピー性皮膚炎に良い、という研究結果もあります。
免疫;自分を守るため、他者(ウイルス、細菌、カビなど)を認識し排除するための反応
アレルギー;上記が過剰に働き、本来反応しなくても良い物質に対しても反応し自分に悪影響を与える反応
アレルゲン…ダニ、ハウスダスト、カビ、植物の花粉、などがあります。血液検査によって、自分のアレルギーの有無を知ることは、生活の上でも、大切なことです。当クリニックでは15分でわかる、指先アレルギー検査を実施しております。
適切な治療で多くの場合が小児期に治癒することも多く、成人の場合も適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患であるため、いかに皮膚症状を良い状態で維持するかが重要です。
ただし成人になっても症状が続いたり、成人になってから発症することもあり、良い状態で経過をみていく必要性があります。
かゆみのない夜、保湿のみで毎日が過ごせるようなゴールをめざします。